伝統文様の意味を知り、おもてなしに取り入れる

オリンピックのロゴや人気アニメの主人公の衣装にも使用されている「市松模様」。正方形が格子状に並べられ、シンプルで素敵ですよね。どこか日本らしさが漂う市松文様は、日本の伝統文様のひとつです。

さかのぼると、古墳時代から使われていた柄ともいわれている市松模様ですが、呼び名が「市松模様」となったのは、江戸時代になってからなのだとか。そんな日本の 伝統文様の意味を知り、おもてなしに取り入れる 、そんな丁寧な所作がきっと喜ばれます。

伝統文様の意味を知って、おもてなしに取り入れる

世界各地で生まれてきた文様

文様とは、幾何学の形が基本形となり、つなぎ模様になっているもの。文様は日本だけでなく世界各地で生み出されてきました。それぞれに意味を持っているのが特徴でルーツをたどっていくと、衣服や食器、インテリアなど、普段の生活の中で文様を装飾することからはじまったといわれています。

例えば、イスラム建築の壁面を煌びやかに彩る、異国情緒タップリなイスラム文様。イスラムでは、偶像崇拝がタブーなので、人物や動物を描くことができません。模様を規則的に反復することで、神への祈りを理性的かつ視覚的に表す役目を果たすと言われています。

また、イギリスを代表するタータンチェックには、長い歴史があります。スコットランドで生まれたタータンは、氏族や一族を象徴する、王族や貴族の「家紋」のような役割を果たしていました。戦争によって一時的に使用を禁じられた苦難の歴史に見舞われながらも伝統と誇りを受けついだ文様です。

このように文様は世界各地でその国の伝統と文化を背景に生まれ受けつがれてきました。日本でも古くから伝わる文様ですが、日本では主におめでたいときに用いられ、発展させてきたと考えられています。

伝統文様の意味を知って、おもてなしに取り入れる

美しい自然をモチーフにした日本の伝統文様

日本でも古くから受け継がれてきた伝統文様。どこか日本らしさを感じる古風な雰囲気がありますが、見回してみると、街のいたるところにあることに気づきます。

着物や風呂敷、茶碗や湯のみなどの食器の柄、家の中であれば天井や壁、扉など、外に出ればマンホールの蓋などにも使われています。文様それぞれの由来や意味を知ることで、どうしてそこにその文様が使われているのかが理解でき、より一層興味深いものに見えてくるかもしれません。

では、代表的な文様の由来や意味、それに込められた願いを画像の左上から順に紹介します。

  • 青海波
    大海原で無限に広がる穏やかな波模様に未来永劫と平安を重ね、「穏やかな暮らしがいつまでも続きますように」という願い。
  • 七 宝
    円形が永遠に連鎖し繋がる柄であることから「円満で調和なご縁がありますように」という願い。
  • 矢 絣
    結婚の際に矢絣の着物を持たせると出戻ってこない(弓で射た矢は戻らない)といわれるようになり「戻らずにまっすぐに進みますように」という願い。
  • 紗綾形
    連続の卍つなぎが不断長久(絶えず永く続く)という意味から「我が家が繁栄しますように」という願い。
  • 亀 甲
    亀は昔から長寿、吉兆の象徴とされたことから「長生きしますように」という願い。
  • 麻の葉
    麻の葉は成長が早いことと麻の葉自体に邪気を払う性質があることから「お子様が健やかに成長しますように」という願い。

現在、和柄と呼ばれ親しまれているデザインの多くは、平安時代中期頃に文様をパターン化し、規則正しく並べたもの。平安時代初期は、中国などの影響を大きく受けたものがありましたが、日本独自のもの、他国から伝わったものを日本風にアレンジしたデザインへと変化し、受け継がれてきました。

ちょうど源氏物語が生まれ、日本文学が大きく発展する時期に突入した頃です。ひらがなも誕生し、デザインも日本独自のものへと変わっていく時代だったというわけです。歴史的なデザインを継承しながら、日本ならではの要素も取り入れる。和柄には古くから日本人が大切にしている”美しい自然”をモチーフにしたものも多く存在しています。

いかがですか?日本人ならではの感性や美学が詰まった和柄。見過ごしてしまいがちですが、実は身の回りのさまざまなものに使われています。「文様の意味」を知っていれば、さまざまなシーンでのおもてなしにきっと役立ちます。