割り箸は最高のおもてなしアイテム
コンビニやチェーン店など至る所であたりまえのように割り箸が出てきますよね。でも実はもてなしの基礎を築いた千利休によって作られたものがあるくらい、 割り箸は最高のおもてなしアイテム なんです。
エコブームでマイ箸などを持ち歩く方も増え、そういえば「割り箸」最近使っていないかも…という方もいらっしゃるかもしれません。そんなおもてなしの席で活躍する割り箸の由来 からおもてなしの道具であることをを紹介します。
割り箸の由来とその現状
箸(はし)はいつごろ日本に伝えられたかは定かではなく様々な説がありますが、7世紀頃中国から伝来した箸を聖徳太子が朝廷の儀式で用いたことが、始まりとされています。その後箸食制度が取り入れられ、一般の人にも使われるようになったのは、さらに100年ほど経た8世紀頃と言われています。
では割り箸はどうでしょう。広く普及したのは明治時代と言われていますが、江戸末期に奈良県吉野の酒樽の杉端材を用いて作られたのが最初の割り箸と言われています。
完全に2本に割ってしまわず、つなぎ目を少し残し切れ目を入れて割って使う割り箸のアイデアは、縦に割れやすい杉の特性をよく知る吉野の職人だからこそ出てきたものでしょう。この時代から”捨ててしまうもの”を有効活用する優れたエコ感覚を持っていたことは同じ日本人として誇らしいですね。
今も国産の割り箸は、丸太から建築用材などを切り取ったときにできる端材や残材、間伐材でつくられます。一部の高級割り箸を除き、割り箸のために伐採される木はありません。
一方、海外では木材価格が非常に安いため、原木をすペて割り箸に加工してしまいます。日本国内では年問250億膳超、木造住宅にして20,000戸分もの割り箸が使われていますが、実はその98%は海外から輸入されたもので、そのほとんどは中国製です。
ところがその中国製、将来その供給が危ぶまれています。中国政府が昨今の大気汚染など環境問題を受けて「森林保護」を理由に生産を制限し始め、数度にわたる値上げ、いずれ輸出も禁止する、といった措置を検討しているようです。
大きく依存しているだけに普通に考えればちょっと不安を感じてしまう出来事かもしれません。しかし逆に考えれば再び国産の割り箸が見直されるきっかけになるかもしれません。
2割まで落ち込んだ日本の木材の自給率。それにより林業は衰退し、山村の高齢化が進み、林業の担い手がおらず、手入れできずに荒廃している森林も少なくありません。国産材を使った国産の割り箸が普及すれば日本の森林と山村を支えるサステイナブルなアイテムになる可能性も考えられるでしょう。
“使い捨て”の悪いイメージが強くなってしまった割り箸。実は、国産の割り箸は本来捨てられるはずだった端材や間伐材からできていて、森林資源を有効活用した“エコ商品”だった、と分かれば使ってみてもいいと思いませんか。
出典:吉膳
割り箸のいろいろ
割り箸には様々な形がありますよね。「ここのお店やお弁当に出てくる割り箸が好き!」など、お気に入りの割り箸があるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
みなさんが普段お目に掛かる割り箸として、丁六(ちょうろく)箸、小判(こばん)箸、元禄(げんろく)箸があります。コンビニやチェーン店で使われていることが多い比較的安価で沢山流通しているもので、そのほとんどが海外からの輸入品です。白樺やアスペン(ホワイトポプラ)など手に入れやすい材料からできています。
一方、国産の割り箸は比較的高価なものが多く、特別な席で用いられることがほとんどです。竹、えぞまつ、栁、桧、杉などの材料からできています。
では国産の割り箸で多く用いられる箸の種類を実際の画像で上から順に説明します。
- 天削(てんそげ)箸
持ち手片側を鋭角的にカットしてある割り箸で、先は丸く加工されています。料亭やおもてなしの際によく使われる割り箸です。なぜ、斜めにカットしているのか。それは、見た目の美しさを強調するためです。杉や檜の美しさが際立ちます。 - 丸(まる)箸
こちらは割り箸でなはく組み箸と呼ばれています。よく見かけるものなので一緒にご紹介しておきます。丸い箸で両端が細く削られているのが特徴です。お祝いの席などでよく使われる丸端には「丸くおさめる」「割らない」といった意味があります。 - 利休(りきゅう)箸
丸箸をご紹介したのは、こちらの利休箸がわかりやすく説明するためです。丸箸は1本1本独立していますが、その真ん中がくっついた状態になっているのが利休箸です。 - 卵中(らんちゅう)箸
卵中箸は一本利休箸とも呼ばれます。真ん中がまるで卵のように膨らんでいることからこの名前が付きました。 子孫繁栄や五穀豊穣の願いが込められています。
利休箸と卵中箸は、千利休が茶席でお客を”もてなす”ときに愛用、ときに客人のために自らつくっていたものとされています。となると…。おもてなしの席で積極的に使いたくなりませんか?実際、礼儀作法の面でも、どんな高価な塗り箸よりも一人一回きりしか使用しない割り箸の方が格が上とされています。
少し意外ですが、割り箸は本来客人をもてなすための食器だったのです。割り箸を割ることには祝事や神事などにおいて「事を始める」という意味があり、その際には真新しい割り箸が用意されてきました。
また、食事でおもてなしするお客さまに、誰も使っていない新しい箸を準備する。途中まで割ってあるのは、手間をかけないため。そして、最後にお客様自身が割ることで、それが「未使用」「清潔」であることもお客さまに伝えるためとも言われています。
割り箸にはまだまだ種類があるようです。今回ご紹介したものは、よく見かけるもので使い分けを知っておきたい割り箸の代表格です。割り箸ひとつをとっても、どんな割り箸を使っているかでおもてなしの心の伝わり方、変わってくるのではないでしょうか。