コミュニケーションの場をつくりだすオリニギリ
新田さんご夫婦の何気ないアイデアから生まれたオリニギリは、折り紙の要領で「おにぎり」をつくり出すペーパークラフトです。
東北復興支援から始まったオリニギリのワークショップでは多くの人との出会いが生まれました。 コミュニケーションの場をつくりだすオリニギリ は、様々な国や地域でのイベントで人気のアイテムです。
おりがみ ✕ おにぎり = オリニギリ
オリニギリの名前の由来は、一枚の紙からつくる日本の伝統の遊び「おりがみ」と、同じく日本の伝統的な食「おにぎり」との偶然の出会いによるものです。
そのオリニギリが世に出るきっかけとなったのは、東日本大震後のボランティア活動から。
復興イベント「東北風土マラソン」を中心に、2015年からのべ10,000枚以上が贈呈され、設備が伴わないイベント会場や避難所での衛生的な食事のアイテムとしてとても重宝しました。
ただ配るだけでなく、参加した地元のみなさんと一緒にオリニギリでおにぎりをつくったり、子どもたちとのオリニギリ ワークショップを開催するなどの活動を重ねてきたそうです。
そこから新田さんご夫婦の活動の輪はさらに拡がり、アメリカ、中国、インド、台湾、ベトナムなど多くの国でオリニギリ ワークショップを開催するようになりました。
ニューヨークでのワークショップでは、折ったシートの中のご飯をリズムに合わせて、「シェイク、シェイク」みんなで輪になって楽しくおにぎりづくり。
また、台湾・中国では、まるで伝統芸能の切り紙アーティストのように器用に海苔を「ちょきちょき」独創的なデザインの海苔が巻かれたおにぎりはまさにオリニギリのクリエイティブな創作の醍醐味でした。
これらの活動を重ねるたびに、新田さんご夫婦自身オリニギリとの関わり方に変化を感じるようになったそうです。
「はじめは単なるおにぎりをつくる道具でしたが、色々な場所でたくさんの人が集まり、一緒に楽しんでいる様子を見て、人をつなぐ、場をつくることができる道具なんじゃないか、と感じるようになりました」
実際、オリニギリが結んだ縁は、数え切れません。ワークショップで参加した一般の人はもちろん、農家と消費者、異文化の交流など様々です。
おにぎりも人の縁も結ぶ、オリニギリの魅力
国内外問わず多種多様な縁を結ぶオリニギリ、その魅力はどこにあるのでしょう。これまでのオリニギリに関わったみなさんの反応や感想から分かったことがあります。
- プロダクトとしてユニークでユニバーサルなデザイン
おにぎりを綺麗につくることが難しいお子さんや、そもそもおにぎりを初めて知り触れる外国人でも、オリニギリがあれば楽しく簡単におにぎりをつくることができます。
新田さんが高層ビルを設計中、ふと浮かんだ不思議な形が二つ繋がったおにぎりに見えた・・・。そんな些細な出来事から生まれたオリニギリだからこそ誰にでも簡単に形にすることができるのでしょう。 - 親しみやすい二つのテーマ『遊び』と『食』のコラボレーション
シンプルでどの年代にも馴染みやすい『遊びとしてのおりがみ』、ミシュランガイドに紹介された日本の伝統的な味を知ることができる『食としてのおにぎり』。二つの親しみやすいテーマ『遊び』と『食』のコラボレーションが年齢や人種など多種多様な人々のこころを鷲づかみにしています。
「ユニバーサルでユニークなデザイン」と「『遊び』と『食』のコラボレーション」、二つの魅力によって人びとを虜にするオリニギリですが、それを象徴する最近のできごとがあります。
中国の上海博物館で近日開催予定のオリニギリ ワークショップ。このワークショップの開催のきっかけとなったのは、新田さんがたまたま泊まったホテルがちょうど上海博物館の前であったこと。ふらっと立ち寄りオリニギリを紹介したところ、博物館の副館長がとても興味を示しイベント開催に至ったそうです。
また、オリニギリは、特定非営利活動法人TABLE FOR TWO Internationalが取り組む「おにぎりアクション(世界の子どもたちに給食をプレゼントするソーシャルアクション)に参画していますが、こちらもニューヨークで実施したワークショップにTABLE FOR TWOの担当者が偶然会場の案内の看板を見て立ち寄ったことが出会いのきっかけになったそうです。
同じような出会いからドイツをはじめとするヨーロッパでもワークショップを開催、交流の場は拡がろうとしています。
いかがでしょう。このような出会いで舞いこむ話しは、今も後を絶ちません。そしてその後ワークショップに参加された人たちは、みなさん「面白かった」、「新しい」、「独創的」という感想を残して行かれます。
オリニギリで作られるモノには決められた完成形はありません。おにぎりの形も中の具材もワークショップに参加する人たちが思いのまま自由につくることができます。
決めつけや押しつけのない、自分の価値観でつくる非日常的な体験は、『遊び』と『食』という体験者の繰り返される日常に引き継がれ、影響を与え続けるものへと変化していきます。
さまざまな場で活躍するオリニギリは、人の出会いはもちろん、オリニギリを手にする人の『遊び』と『食』を育むコミュニケーションツールとして大きな期待が寄せられます。
最後に、オリニギリをどのように育てていきたいか、新田さんご夫婦にお伺いしました。
「オリニギリによって生まれる、偶然に起こることがとても楽しいです。オリニギリ公式ガイドブックの表紙でその楽しさを僕たち夫婦が伝えています。そしてその楽しさが将来生まれてくるこどもたちにオリニギリと言えば、”誰とでも仲良くなれる道具だよね”、と誰もが知っているモノになってくれたらと思っています」