伝統工芸品の陶磁器の特徴と使い方
今回は、 伝統工芸品の陶磁器の特徴と使い方 についてご紹介します。
伝統工芸品のジャンルに「陶磁器」があります。これは陶器と磁器の総称です。普段は、陶磁器、陶器、磁器というよりも、「焼き物」などと呼ぶことの方が多いのではないでしょうか。
器を知ることでおもてなしのしつらいを身につけてはいかがでしょう。
陶器の特徴と扱いかた
日本の焼き物で陶器と呼ばれるものには「益子焼」「笠間焼」「信楽焼」「丹波焼」「備前焼」などがあります。
陶器の主な原料は陶土と呼ばれ、それ自体は粘土(ねんど)です。自然から採れる粘土を使って形を作り、釉薬(ゆうやく)をかけて焼き上げます。このときの温度は約1100~1300度と言われています。
もともと粘土は吸水性がありますが、釉薬を掛けることで、見た目の美しさ以外に水を通しにくいようにしたり、割れにくくしたり汚れを付きにくくするといった実用性もアップさせています。
釉薬は原料の組み合わせや調合の割合によって無限の種類つくることができます。また同じ釉薬でも焼き方や土との組み合わせなどによって色合いが大きく変化し、器を彩ることが出来ます。釉薬がかけられている部分はツルツルで、釉薬がかかっていない部分はザラザラしているという手触りも特徴のひとつです。
手に入れた陶器をはじめて使う前には目止めをすることをお勧めします。目止めとは、陶器の見えない小さな凹凸に食材の色や臭いが移るのを防ぐために表面をコーティングすることです。またシミやひび割れの予防にもなります。
目止めはお米のとぎ汁につけ弱火で15~20分ほど煮沸すれば大丈夫です。目止めは、必ずやらないといけないというわけではありません。ただ少しでも愛着をもって長持ちさせたいなら目止めをした方が安心です。
お食事後は、シミの原因となるため、なるべく早く洗ってしっかり乾燥させてください。日ごろの手入れ次第ではとても長くお付き合いできるアイテムになります。
また、陶器は保温性に優れています。お料理を盛りつける前に、あたたかい食べ物を盛り付けるときには、ぬるま湯であたためて、冷たいお料理を盛り付けるときには、冷たい水をくぐらせてみてください。温かいお料理は温かいままに、冷たいお料理は冷たいまま、そんな心遣いもお料理を美味しくいただけるおもてなしですね。
磁器の特徴と扱いかた
日本の焼き物で磁器と呼ばれるものには「九谷焼」「京焼」「有田焼」「伊万里焼」などがあります。
磁器の主な原料は陶石(とうせき)と呼ばれ、細かく砕いた石英や雲母から成る原料でできています。その原料から形にした素焼きの素地に細筆を使って絵や模様などの下絵付けをします。
その下絵に塗りを施し表面をおおうために釉薬をかけ、再び1300度前後の高温で焼くというのが一般的な磁器の作り方です。美しい色絵が特徴の伊万里・有田焼では、高温で焼いた後、赤や緑、黄、藍などの他、金銀彩などの絵を色絵具を使って付けていきます。
色絵具には和絵具(わえのぐ)と洋絵具(ようえのぐ)があります。有田、京都、九谷で使われる和絵具は、顔料をガラスの粉末に混ぜて色を付けています。『ガラスの中に溶かし込む』ので透明感が出るのが特徴です。
一方、洋食器、マイセンなどでよく使われる洋絵具は、合成顔料を使います。カラフルなものが多いですが、混ぜるガラス粉の量が少なく不透明な仕上がりといわれています。日本の磁器で独特なぼかしの表現ができているのはこういうことなんですね。
その和絵具の中で特に有名なのが「柿右衛門の赤」で使われている「花赤」。水簸(すいひ)と呼ばれる砂金を採取する技法を使い、10年かけて原料の粒の大きさをナノレベルにするそうです。
粒子がナノレベルの細かさであることで、もっとも明るく発色し繊細で美しい濃淡のグラデーションを生み出せるのだそう。「柿右衛門の赤」はこのような気の遠くなるような手間からつくられているんですね。
磁器の素地は白くて硬く、吸水性がないので汚れがつきにくくとても扱いやすいです。また、強度があるため薄く作られているものが多く、光にかざすと透けるものもあります。
指ではじくとキーンと金属のような高い音がします。また、磁器は急激な温度変化に弱いため、冷えた食器を急激に温めることは避けた方がよいです。冷えている場合はぬるま湯にくぐらせるとよいでしょう。
磁器は吸水性がないですが、やはり洗った後はよく乾かしてから片付けましょう。金彩・銀彩などの絵付けものは柔らかい布やスポンジで丁寧に洗うなど取扱いに注意が必要です。
絵付きものは高台で傷つく恐れがあるので、重ねておくときは紙などを挟んでおくとよいでしょう。また、磁器と陶器を重ねておくのも注意が必要です。磁器は陶器より硬いので、積み重ねると陶器を傷つけることがあります。
陶磁器は食卓を彩るアイテム
料理は見た目も重要です。同じ食材を使って同じように調理されたものでも、盛り付け方ひとつで印象は大きく変わります。
料理をもてなすかたに喜んでもらえるように、できるだけ美味しそうに、豪華に盛り付けていくためには、料理そのもののほかに器なども何を使うかが重要なポイントになります。
料理自体はそれほど奇抜なものを作ることはできません。実際日本料理の多くは形が決まっているものなどが多く、例えばお寿司などはそれほど形に変化をつけられるものではない典型と言えます。
しかし、器や盛り付けかたの工夫で、様々な表現をすることができます。陶磁器には、様々な形があるのはもちろん、色や柄もとても豊富にあります。器によって盛り付ける料理に合わせ必要な色や柄をプラスして食卓に彩りを与えるのも日本料理の一つの要素といえるでしょう。
また、重さや肌触り、持ったときや口をつけた時の触感など、本来料理とは関係の無い感覚も大切にしています。他の国では見られない食器を持って食べる文化であるからこそ、器選びのポイントにしているのかもしれません。
もてなすひとの個性を発揮しつつ、盛り付けられた料理をよりおいしく見せるためのアイテムとして、陶磁器は欠かせないものです。ぜひ、自分のイメージに合った器探しをしてみましょう。